企業防災って…!?
一定程度の社員数・規模の企業に対し、消防法施行令第4条第2項では防火管理者を置かなければならないとされています。
と、なっていますがご存知でしょうか?
難しいし、そんなん知ってるわけないやろ。
その通り!社員がその責務を知る機会は少なく、
せいぜい給湯室の「火元責任者」の札で担当が誰だったのかを認識する程度だと思います。
では、会社の防災についてみんなで考え、意見を交換する機会はあるでしょうか?
例えば、
「いつも給湯室に置いてある〇〇さんのお弁当の袋は、コンロを使った時に引火の危険があると思う」などと、
防火管理者に報告する習慣はあるでしょうか。
防火や防災は担当の人だけのものになっていて、他の人は社内の防災に無関心になってはいないでしょうか。
防火や防災が大切なのは知ってるけど、難しいねん…
もし社内で災害が発生した場合、
防災担当者が1人だけで対応できると思っているの?
社内で災害に接した時、全員の命に防災担当者一人が対応できるはずはなく、
個々に命を守る行動をしなければなりません。
それには、日頃からの心構えと社内における防災知識が必要となってきます。
「防災訓練を行っている」という企業もありますが、大部分が避難訓練と消火訓練が一般的だと思います。
消火訓練には消防などの協力が必要で、消火器の種類や使用法。
消火栓の使用法なども、社内の防火管理者の手だけでは足りないでしょう。
避難訓練も、仕事の手をいったん止めることに大きな負担を感じつつ、
集合場所まで歩くだけの恒例行事になってはいないでしょうか。
逆算して、いつもやっていることが実際の災害でどんな風に役立つのか。
いくつもの災害を経験したからこそはっきり断言できますが、
危機管理がない行動訓練は無意味です。
企業防災とは、誰かが1人でやるものではなく、
社員全員が危機管理を持って安全について考え、リスクを把握し、そのリスクに合わせて対策することをいう。
1. 過去の大惨事
「我が社にぴったりな、我が社に役に立つ訓練」とは、
全国一律のハンカチを口に当てて階段を降りることではないのです!
だいたい避難訓練ではやってるけどな〜
例えば、自社ビルや自社屋で建物内の全員が同僚である場合と、
雑居ビルの1室を使っている会社では避難の仕方は全く異なります。
非常階段の開錠は契約警備会社の警備員の手によるものか、
自動か、プラスチックカバーを破壊するのか、
フロア内の非常階段に一番近い会社・部署の防火管理者が開けるのか。
雑居ビルの場合は確認事項が多くなります。
【参考】雑居ビル火災で避難経路の確保ができておらず、多くの犠牲者を出した…
http://nrifd.fdma.go.jp/publication/kouenkai_gaiyou/files/koenkai_6th.pdf
歌舞伎町ビル火災とは、2001年に新宿歌舞伎町で発生した火災であり、
44人が死亡し、3人が負傷する被害を出しました。
多くの死傷者を出した原因は、ビル内の避難通路の確保が不十分であったためとされる。
歌舞伎町のビル火災は衝撃的だったよなー…
このことからも、知らないことが「逃げ遅れる」ということにつながります。
2. 企業防災の具体的な検証
企業の防災担当者はどのようなことを考えなければいけないのでしょうか?
■そのビルは築何年か。
■耐震基準はどうなっているか。
■旧耐震であっても、行政による診断を経て新耐震対応となっているか。
■何階建てか。
■二方向避難が可能なのか。
■低層階の人が窓から飛び降りざるをえない場面で、地上はコンクリートか、花壇か、ゴミ捨て場なのか。
■避難経路は安全か。
■消防設備に不備がないか
■避難所としての開設はできないか。
■防災の備蓄品を蓄えているか。
■火災保険や地震保険に加入できているか。
どんだけあんねん。
まだまだ書き切れないぐらいある。だから1人でするのが難しいんだよ!
3. 大災害に役立つリアル避難訓練は〇〇だ。
地震で考えてみます。
皆さんも経験したことがあると思いますが、大きな地震の前には携帯電話やスマホから、アラーム音が鳴ります。
それが一斉に鳴り響き、地震の発生を知ることになると思います。
この一斉アラームを聞き、社員がどのような行動を取るのかわかるので、
Youtubeなどを活用して実践してみてください。
▼緊急地震速報の音
その行動を見れば、危機管理能力がある人とそうでない人が明確に出ます。
「やばい!」と思い、命を守る行動を取れる人がどれだけいるでしょうか。
周りの人を確かめるだけで、自ら行動できない方が大半になるでしょう。
それでは、巨大地震が発生すれば危険です。
「自ら判断し、自ら行動でき、自ら安全確認できる人を増やすこと」が最も大切です。
首都直下クラスの地震の場合は、揺れた後でアラームが届く可能性も十分あります。
地震で驚いて、さらにアラームで追い打ちをかけるという現象が起こりうることも頭に入れておいてください。
小学校・中学校時代の避難訓練は、スピーカーから地震発生を知らせる校長先生のアナウンスが流れ、
子供たちは机の下に隠れます。
揺れが収まった後、ハンカチで口を押え運動場に集合するというのが一般的な手順です。
3-1. 企業ではどうなのか
180センチの身長がある社員は机の下に入ることが出来るのか。
100キロを超える社員はどうでしょうか。
学校の机と違い、会社のデスク下にはモデムや電気機器が置いてある場合もあります。
入ることが出来なければ、落下物・飛散物の心配が出てきます。
自宅の家具固定は盛んに言われていますが、会社の書庫を固定しているところはどれほどあるでしょうか。
上段のガラス引き戸にはガラス保護シートが貼ってあるでしょうか。
中のバインダーがガラスを突き破って飛んでくるかもしれません。
また、ありがちな収納方法で、
重いバインダーや書類が上段で下段は文房具のストックなど軽いものが多くはないでしょうか?
自宅にあるフルオープンの書棚の場合、下段には重い辞書、
上段は棚の高さも低く文庫本などをいれるようレイアウトされています。
会社では使用頻度や仕事のしやすさ優先で収納している場合が多いので、
収納バランスがかなり悪く、倒れやすい状況かもしれません。
さらにスチール製の書棚は本体が軽く、飛んでくる可能性もあり、角は凶器になりえます。
社内で安全な場所はどこなのか。社員ごとに検証する必要があるでしょう。
避難となったとき、非常階段を歩いて降りることが出来る階数なのか。
10階以上である場合、エレベータを使用しないで階段を使うと10分〜20分かかるという事。
さらに、下階の人が先に階段を歩いているため、上階の人は列の後ろにつくことになり、
上のフロアで働く人ほど渋滞のしわ寄せが大きくなります。
実際に9.11テロの現場では階段で大きな渋滞が起き、脱出の前にビルが倒壊してしまった事例もあります。
下に行くより、上に行った方が安全な会社の場合、冬の避難は寒くなり、夏の避難は暑くなります。
そのため、四季を想定した防寒具や暑さよけグッズの準備が必要です。
火災の発生、津波の接近、帰宅するのか、会社にとどまるのか、
ここから先も、未来のストーリー展開の予測が必須となってきます。
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